大人の引きこもり

まず最初に確認したいのは、ひきこもりは病気ではないということです。ひきこもりとは、(自宅にひきこもることで)就学や就労、家族以外の他人との親密な対人関係を築かない状態が6ヶ月以上続いていて、その原因が精神疾患(障害)とは考えにくい状態像を示す言葉です。

自分の部屋に閉じこもっている方だけでなく、1人でならコンビニや映画鑑賞などに行けるような方でも、家族以外の他人との交流がなければ、ひきこもりと判断できます

内閣府が2015年に行った調査『若者の生活に関する調査報告書』(内閣府政策統括官)によると、15~39歳の方で、「ひきこもり」群の出現率は1.57%、全国で推計約54万1000人とのことでした。前回調査した2010年の推計69万6000人(出現率1.79%)に比べて15万5000人ほど減少していました。

「引きこもり」群の定義は、6ヵ月以上にわたって<趣味の用事のときだけ外出する><近所のコンビニなどには出かける><自室からは出るが、家からは出ない><自室からはほとんど出ない>状態とされました。

本調査では、家族会や地方自治体の調査では半数近く存在する40歳以上の人は調査対象から除外されており、54万人という推計は実態を反映していないという批判もあります。こうした批判を受けていますが、40歳から59歳を対象とした中高年のひきこもり調査を予定しています。現在は調査が行われてはいません。

ひきこもっている家族がいることを対外的に公表していない家庭もあるため、国や自治体の調査によって統計データはまちまちで、正確な人数を把握することは難しいのが現状です。39歳以上の引きこもり当事者も含めると、100万人を超えるのではないかと考える専門家も少なくありません。

引きこもりが起きる原因とは?

・きっかけは挫折体験
引きこもるきっかけとしては、成績の低下や就労の失敗、失恋やいじめなど一種の挫折体験が見られることがあります。内閣府の調査を見ると、病気や仕事・学業でのつまずきが引きこもりのきっかけになったケースが最も多いのです。

・引きこもりシステムについて

まず、「個人」の段階では、先ほど挙げたような挫折体験がきっかけとなりひきこもり状態が発生します。すると、引きこもりに対して「家族」の焦燥感や不安感が強まります。ここで、引きこもり当事者と円滑なコミュニケーションが築かれていない(=接点がない)場合、説教や叱咤激励といったかたちで一方的なプレッシャーを与えることになり、さらに引きこもりが深まってしまいます。

これに加えて、「家族」と「社会」がつながっていないと、いっそう悪循環が強まります。社会とのつながりというのは学校へ行っていたり働いていたりといった社会への参画という意味ではなく、ひきこもりの状態を対外的に公表、相談しているかどうかです。

世間の評判を気にして引きこもりをひた隠しにしたり、誰にも相談しなかったりして「社会」との接点がなくなってしまうと、治療や相談の機会が失われてしまいます。こうして、引きこもりの長期化を促すシステムの構築につながっていくのです。

引きこもりの脱出するには

多くの引きこもり当事者が引きこもり状況に苦しみ、脱出を望んでいることも事実です。また、ひきこもりによる長期の孤立状況は、心身にさまざまな悪影響をもたらすことには医学的な根拠もあります。当事者や家族が何らかの支援を望む場合に、医療を含む様々な支援手段や社会資源を利用することが可能です。以下、それについて述べます。

引きこもりから脱出するためには、先に述べたひきこもりシステムをそれぞれの接点のある通常のシステムに近づけていくことになります。それでは、具体的にどのような対応が考えられるのでしょうか。ここでは、精神科や心療内科などで行われる家族相談、個人療法、集団適応支援という三段階の対応方法について説明します。


家族相談
引きこもっている当事者が最初から医師のもとに来ることは難しいケースが多く、家族(両親)による相談から始まります。「本人がいなければ無意味では?」という疑問もあるかもしれませんが、家族相談は非常に有意義です。

まず、医師が家族から間接的に情報を得て、受診や介入のタイミング、方法を練ることができます。さらに、引きこもり初期の段階で家族に適切な対応方法を伝えることで、親子関係の改善をはかることができるのです。

それにより、長期化を促す引きこもりシステムのうち、「個人」と「家族」がうまく接点を持ち、この時点でひきこもりの解消につながる可能性もあります。


個人療法
医師によるカウンセリングなどの精神療法が主な内容になります。当事者からの相談に医師が答えを示すこともあれば、雑談に終始することもあります。ここでは、話の内容よりも、医師と会話することで信頼関係を構築することと、外出して他人と話をする習慣を身につけることが大きな成果となります。

また、医師によっては薬物治療も並行して行う場合があります。ただ、引きこもりそのものに効く薬はありません。例えば、外に出たり、電車に乗ったりして不安を感じるときに、抗不安薬を飲むことで活動がスムーズになるといった対症療法的な使用になります。
集団適応支援
家族とのコミュニケーション、医師とのカウンセリングがうまく行ったら、次は家族以外の他人と触れ合う経験を重ねるきっかけを探ります。引きこもりの方が参加しやすい場として、さまざまな問題を抱えた方同士が集まり、相互に語り合うことで問題解決をはかる自助グループや、病院(クリニック)や保健センターなどで行われるデイケアなどがあります。

このほか、カルチャーセンターや英会話教室、ボランティア活動など、実用的でありながら心理的な負担が強くない活動もおすすめです。このような活動を通じて親密な人間関係を複数持つことができれば、引きこもりは脱出できたと言えるでしょう。

引きこもりはイジメや挫折経験をしたことで始まります。家族・本人が社会との接点が無くなることで長期化してしまうということですね。大切なのは家族が身近な人に包み隠さず打ち明けることが大事だと私は思います。

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